悪役令嬢に転生したけど推しが中の人だった件について
第7章 対象キャラ全員の心を掌握したい
王立魔法学園『アカデミア・グランヴェール』。 年に一度の魔術合同大会が、ついに幕を開けた。
貴族子弟と騎士候補生が混成チームを組み、 魔法と戦術を競い合うこの大会は、名誉と未来を懸けた舞台。
そして、今年の注目チームは──
第七演習班 ・ヴァイオレット・ド・ローゼン(闇魔法) ・ルシアン・ヴァルモン(氷魔法) ・レオン・クロード(炎魔法+剣) ・ノエル・アルベリッヒ(雷魔法) ・ユリウス・ローゼン(風魔法)
属性も立場も異なる五人。 だが、今はひとつの陣営として、戦う。 敵は、魔力を喰らう幻獣『グリム・ヴォイド』 通常魔法が通じず、連携と属性操作が鍵となる。
「闇で視界を遮断します。ルシアン様、氷で足止めをお願いしますわ」
「了解。氷壁、展開」
ヴァイオレットの闇が敵の目を奪い、 ルシアンの氷が足元を封じる。
「よっしゃ、燃やすぞ!炎剣、起動!」
レオンが前衛で斬り込み、 ノエルの雷が敵の神経を麻痺させる。
「雷撃、左斜線。ユリウス、風で誘導を」
「風圧、展開。ヴァイオレット、今だ」
「闇魔弾、発射――!」
五属性が交差し、敵が崩れる。 観客席がどよめく中、彼らは静かに立ち尽くす。
「……君の指示、的確だった。 以前の君なら、こんな連携はできなかったはずだ」
(きた……!氷の公爵様が、成長を認めてくれた……!)
「ありがとう、ルシアン様。あなたの氷が、私の闇を導いてくれたんですわ」
ヴァイオレットの言葉に、ルシアン・ヴァルモンはわずかに瞳を細めた。
それは、彼にしては珍しい“微笑み”に近いものだった。
氷の公爵が、誰かに心を開く瞬間――
――そんなふたりの間に割って入ってきたのはレオンだった。
「お前、やっぱり戦えるじゃん!俺、ちょっと見直したぞ!」
豪快な声とともに、レオン・クロードがガバリとヴァイオレットの肩を抱いた。
炎属性らしい距離感ゼロのスキンシップ。
その瞬間、空気が変わった。