第3章 はじめましての訓練
公安に保護されて、一ヶ月ほどが経った頃だった。
昼間は笑えるようになった。
ホークスの冗談に、ちいさく微笑むことも増えた。
羽の訓練では泣かなくなり、
治癒も前より安定するようになった。
…でも、“夜”だけはどうしても駄目だった。
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その日の夜も、公安の無機質な部屋に静寂が落ちていた。
カーテン越しの街灯が、淡く天井を照らしている。
小さなベッドに横たわるは、拳をぎゅっと握りしめて眠っていた。
だが――
「……やめて……いや……いやぁ……」
夢の中で、何度目かも分からない“あの光景”が繰り返される。
炎が揺れ、家が崩れ、父と母が倒れていく。
助けられなかった自分の手は、
血のように赤く見えた。
「……っ、やだ…! やだよ……!」
の声が上ずり、呼吸が荒くなる。
次の瞬間――
ガタンッ。
寝具が揺れ、身体が跳ね起きた。
大粒の涙がぼたぼたとシーツに落ちる。
「……たすけて……だれか……」
暗闇の中、震える手で布団を掴む。
その時だった。