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太陽と月 【文スト/中原中也】

第5章 変わった世界


「少し気分は善くなったかぇ?」

『はい、姐さんのおかげで…ありがとうございます』

「ふふ、気にするでない。礼を云わなければならぬのはわっちの方じゃ…つかぬことを訊くが、何故あの時わっちを庇ったんじゃ?」

『…姐さんには善くしてもらっていましたから。それに…死んで欲しくなかったから…そう思ったら身体が勝手に…ッ!?』

白雪の言葉に紅葉は思わず彼女を抱き締めた。

初めて白雪の気持ちを知れたのだから…

ポートマフィアに居た頃の彼女は美しい人形だった。

自身の意見は云わず、ただ与えられた任務を淡々とこなす。

そんな彼女が今では自身の意見を云えるようになっていたのだ。

この時紅葉は初めて光を見せるのは悪く無いと思えた。


突然紅葉に抱き締められた白雪は驚きもあったが、同時に安心感に包み込まれた。

そして白雪はゆっくりと口を開く…

『姐さん…勝手に居なくなってしまってごめんなさい。でも私…救う側の人間になりたい』

白雪の言葉に紅葉は目を見開くが、すぐに優しい表情に戻った。

「白雪…闇の花は闇でしか咲かぬ。それはいつか主自身で気付くじゃろう…然し、その魔法が解けるまでは…光の世界で生きてみるのも悪くは無いかもしれぬな…」


『ッ!!姐さん…』

「白雪、鏡花を頼む…いつか光という魔法が解けたその時は2人で戻って来い…」

『ありがとうございます…お言葉は有り難いですが…私は此処に戻るつもりはありません』

白雪の言葉は真剣だった。

初めて見るその顔に紅葉は思わず頬を緩めた…

「ふふっ…面白いのぅ…」


闇の花は闇でしか咲かない。

どんなに光を追ってもだ…

それを紅葉は痛いほど判っている。

然し、心の中で紅葉は願った。

もう少しだけ白雪や鏡花が光の世界にいれますように…っと。

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