第9章 事情聴取(相澤消太)
『繭莉、エリちゃんの髪が伸びてきたから揃えてやってくれないか』
……っていう消太の一言で、私は4か月ぶりに雄英を訪れていた。
4か月って、意外と早いなぁ……
なんて思いながら、校門前で消太を待つ。
実は、消太の仕事が忙しくてまるっと1か月会えてない。
久しぶりと言われればそうなので、ちょっと緊張してしまう。
何故か気合い入れて、昨日たっかいトリートメントしちゃったりとかしてしまった。
男がこれに気付くとは到底思えないけど、自己満足でよしとしてみる。
「繭莉」
「は、はい!?」
後ろから突然消太の声が聞こえて思わず変な声が出てしまった。
……ちょっと考え事、しすぎた……
「また碌に連絡できなくてすまなかった。少し立て込んでた」
「ううん、全然!……なんか、疲れてる?」
私がそう言うと、消太は少し吃驚した表情を見せた。
「どうしたの?」
「いや、誰にも言われなかったから、少し吃驚した。……流石だな、繭莉」
うん、そりゃ恋人ですから?フフフ。
ちょっとした優越感に浸っていると、突然消太に抱きしめられた。
「しょ、消太?」
「……疲れてるから、癒されたい」
ほ……
い、癒しって……
そっと消太の背中に腕を回そうとしたその時、「相澤くん」といつぞやのように後ろから声が聞こえて思わず振り向いた。
そこに立っていたのは、またもやネズミの校長先生。
「そういうのは、生徒に見られたら良くないのさ」
また、見られてしまった……。
「エリちゃんが待ってるのさ。すぐ、行くんだよ」
そう言うと、校長先生はてくてくと歩いていってしまった。
あ、消太の所為で本来の目的、見失いそうになってた。
「エリちゃん、私の事覚えててくれてるかな……」
「お前が来るって言ったら、少し嬉しそうにしてた」
消太は私から身体を離しながら言った。
あら、覚えててくれてるんだ……おねーさん、嬉しいわ。
「多分自分の部屋にいると思う。行くか」
「うん!」
私達は並んで歩き出した。
……と思ったら、消太が少し屈んできて、おでこに不意打ちでキスをされた。
「しょ、しょ……!」
「行くぞ」
おでこを押さえてあたふたする私をよそ目に、消太はさっさと歩き出してしまった。