【ハイキュー!!】矢印の先に、俺(私)はいない【R指定】
第11章 The Night I Chose You
黒尾は無言で話を聞き続け、そして、わずかに目を伏せたまま低く息を吐く。
「……わかりました。すぐ行きます。」
通話が切れる“ピッ”という音が、妙に大きく響いた。
「……クロ……?」
震える声で仁美が呼ぶと、黒尾はスマホを握りしめたまま言った。
「……まどかさんが、怪我で……病院に運ばれたらしい。」
仁美の胸が、一気に冷たくなる。
さっきまで恋人として触れられていた熱は、夢か幻かと思うほど遠くに感じられた。
黒尾は乱れた息を整え、苦しそうに視線を逸らした。
「……行かなきゃ。」
黒尾は立ち上がり、落ちていたシャツを乱暴に拾い上げる。
「仁美……俺、行かなきゃ。」
「……え?」
耳を疑った。
さっきまで恋人になろうとしていた自分を置いて?
こんな瞬間に?
仁美 は信じられないものを見るように黒尾を見つめた。
「クロ……なんで。なんであなたが行くの?」
黒尾は言葉に詰まり、苦しげに視線を彷徨わせた。