第11章 マグカップ
初めてのデートなんてだけで嬉しいのに、彼女はずっとにこにこしていて楽しそうで、かわいくて。
一緒に買い物していると、鈴の好きなものがわかった気がして、もっと一緒にいたくなった。
だけど、何かくれるって言うんなら。
少しだけ考えて伏黒は辺りをきょろきょろ見回す。ちょうど人気はない。
「やっぱりいっこだけ、いい?」
返事をする前に伏黒の顔が近づいてきて、お互いの唇が一瞬触れ合った。
鈴の唇はふっくらしていて、マシュマロみたいだと思った。
「えええっ!?伏黒くん!?」
「お礼はこれでいいよ。マグカップ買って帰るぞ」
何事もなかったかのように店に戻る伏黒。顔を真っ赤にした鈴が後を追い、背中にダイブする。
「びっくりさせ過ぎ!」
「はは、ごめん」
犬のマグカップはお互いの部屋に置くようで二つ買って帰った。今でも二人のお気に入りだ。