第11章 マグカップ
フードコートで昼食を食べた後も鈴は色々買い込んだ。高専に帰る前、最後に併設のスーパーに寄った時鈴は気づく。
(そういえば、伏黒くん全然買い物してない…!!私ばっかりで…)
肩で鈴の荷物を持ち、器用にスーパーのカートを押す伏黒。上のかごは鈴の分で、下は伏黒の分を入れると決めたばかりだ。
「伏黒くん、買う物なかったの?」
「今買ってるけど?」
「食べ物じゃなくて」
「じゃあ別にない」
(どうしよう。ずっと浮かれて自分の物ばかり買い物してたけど、伏黒くん買いたい物なかったのかな?
こんなにいっぱいつき合ってもらって、何かお礼しなきゃ)
「伏黒くん、何か欲しい物ない?」
「欲しいもの…?特にないかな」
(やだ、どうしよう。こっそり買いにとか行けないし、目星もついてないし…)
そうこうしていると買い物は終わって、両手に荷物を持った伏黒の後をとぼとぼ歩く。自動ドアを出た所で鈴は立ち止まった。
「どうした?買い忘れか?」
振り返る伏黒に鈴は意を決した。
「あのね、伏黒くんにお礼がしたいの。今日は私ばっかりがいっぱい買って、でも一緒に買い物できるのがすごく楽しくて。だから、お礼に何か買いたいの!」
「……じゃあ、最初の店の犬のマグカップ。蓮見がうちに来たときのがないだろ」
「それじゃあ、100円だし、結局私のになっちゃうじゃん!」
「だって俺も楽しかったし。おあいこだろ」
「楽しかった?本当に?」
「うん」