第10章 バスルーム ※
「怒ってる?」
「別に」
行為の後、二人はバスタブに浸かっていた。背を向けた鈴の声色は返事とは相反して怒りを含んでいる。
「恵のムッツリスケベ…」
「ごめん」
とはいえ反省はしていない。欲情しているのに目の前に急に裸で現れた方が悪いと思う。
「したいならちゃんと言ってよ…」
「余裕なかったんだよ。美味そうで」
「美味そう!?」
「そう。首とか」
首筋に噛みつくようにキスすると、片手で口を塞がれた。
「そんな見えるとこにキスマークつけないで!」
「ごめんって。こっち向いて?」
顔を火照らせてプイッと顔を背ける鈴が可愛い。可愛すぎる。キスしたいし、触りたい。さっきも散々触ったけど。
「可愛い。我慢できねぇ」
「もう!今日はなんでそんななの!?」
「鈴が可愛いから。それにいるとわかってるのに風呂に入ってきた方が悪くねぇか?」
「私は雨でびしょ濡れになったから!」
「へぇ?何もされないと思って?さっきも胸触ったら気持ち良さそうにしてた」
ふにふにと豊満な胸を優しく触りながらキスする。鈴は耳まで赤くなって、眉間に皺を寄せてもキスに応えてくれるからそれも可愛い。
可愛いと囁きながら耳にキスして、ぎゅっと抱きしめると細い腕で抱きしめ返された。
「…そんな風にされると欲しくてたまらなくなるのに…」
何が、とは野暮だから聞かなかった。
ぬるくなったお湯で風邪をひいたらいけないから、ベッドの上に移動して、繋がって、求め合って、散々彼女を啼かした。
可愛い、愛してる、好きだと何回言ったかも覚えてないけど全部本音だった。
気がついたら外が明るくなり始めていて、二人で体温を分け合うように眠りに落ちた。