第5章 ダークホース
「す、好きな人ができたの…。」
一瞬、頭が真っ白になってもうた。
目の前にいる俺の好きな子に、好きな人ができた。
その一言にどれだけの破壊力があるか、彼女は知る由もないやろうな。
「そうなんや。同じ部署内の人なんか?」
平常心を装いながら古村に聞いた。
「そう…芹沢先輩って言うんだけど、知ってる?」
「いや、聞いたことないな。」
正しくは興味がない。
彼女以外の他部署の人間なんか、直属の上司に当たらんのやったら知らんに決まっとる。
でも、男が多い職場ではあるし、何人か彼女の好印象な話も聞いたことがあった。
相手が好意を寄せても、間違いなく古村はそれに気づかんやろなと思って、どこか安心しとる自分もいたんや。