第12章 真意
『あ、あのっ、……冨岡さん…?』
「すまない…。
どう反応すればいいのか…
どんな言葉を伝えればいいのか…
分からないんだ…」
『そう…ですよね…。
やっぱり話さない方が良かっ…』
「そうじゃない。
の事を知れたのは嬉しいと思ってる。
だが、そのような辛い出来事を経験したお前を
慰める方法が……分からない…。」
『な、慰めるって…
じゃあ今……こうしてくれるのは…?』
「それも上手く説明出来ないが…
先程の話を聞いたらお前のことを…
……愛おしく思い、体が勝手に動いた。」
『っ…』
愛おしいって……ほんとに…?
私の話を聞いて幻滅するどころか
そんな風に思ってくれるの…?
驚きのあまり
何も反応することができずに固まっていると、冨岡さんは腕の力を緩めて、私の両肩に手を置き、視線を合わせて来た。
「お前が人間の命を尊重している理由がよく分かった…。話してくれて……ありがとう。」
『そ、そんな…お礼なんて…。
それより、私の母についてのことですけど…』
「…正直に言うが
それは俺にとって些細なことだったな。」
…些細!?なんで!?
憐れとしか言いようがない母親なんだよ…!?
私も母親と同じようになったらどうしよう…とか
不安に思ったりしないの…!?
「母親と同じ血が流れていることに
お前は不快感を抱いているかもしれないが
俺にとって、お前はお前だ、
どんな親だろうと関係ない。」
『私は…私……?』
「俺は…、お前と初めて会った時…
何故か不思議な感覚がした。」
『もうっ、不思議な感覚って何ですか…。
分かりにくいですよ…。』
相変わらず言葉にするのが苦手そうな冨岡さんに説明を求めると、冨岡さんの手が顔に伸びて来て
スッと眼鏡を取り上げられていた。