第26章 約束
レッドランプが、グリーンに変わる…
その瞬間、加賀のすぐ後ろにハヤトが入り込む。そうして攻防戦が始まった。
「…今日で本当に最後ね…」
「ん…」
あすかと雅は顔を見合わせる訳でもなかったものの、それでも見つめるモニターの先に映るのはアスラーダとガーランドの二台だった。
「…ハヤト、聞こえるか?」
『はい!』
修からの指示も飛ぶ。ハヤト、アンリと両方の車を見ながらも加賀の事も気にしていた修。
『やはり強い、か』とぽつりとつぶやくものの、それでも一歩も引かないハヤトの走りがモニター越しにも見えてくる。
そんな中でひとまず先に…と加賀がピットインする。その間にもハヤトが1位を奪取した。しかし、その1周後にはハヤトもピットインしないといけない状況だった。
「…どこまで広げられるか、だな」
「そうね」
しかし予想以上にAOIのチームワークも正確だった。予定外の速さで加賀はコースに戻っていく。順位は落ちたものの、すぐにその差を詰めていった。
「アスラーダ、来ます!」
その声でピリッとした空気に包まれるスゴウピット。息をのみ、ただ見守るしかできない雅やあすか。ハヤトもいつも通りと言わんばかりの速さでピットを後にする。
しかしその出る直前に加賀の凰呀が前を通っていった。
「やはり、か…」
小さなため息を吐いた直後だ。
『おーーーっと!ここでアンリ・クレイトーリタイアだ!』
ブーツホルツと接戦して居たアンリが接触こそしなかったもののコースアウト、そこからコースに戻れなくなって居た。
「…ハァ…」
呟きながらもアンリはコース脇の歩道を歩いてピットに戻ってきた。
「…すみません…」
「いや、いい。よくやったな」
「…ッッ」
ピットに戻れば修も称賛をかけた。雅の元に来ると申し訳なさそうに俯いたアンリに対して雅も声をかける。