第23章 過ぎていく疾走
スゴウのトランクルームに入ったままの雅。震えが止まらなくなっていた。
「…城…くん…」
今すぐにでも行きたい…無事を確認したい…そう思っていたものの、足が立てない状態に迄震えていた。
カタン…
戸を開ける音と同時にアンリが入ってきた。
「…さっきはごめん…」
「…アンリ…?」
「言い過ぎた…」
「…ごめん…一人にして…」
「出来ない…」
そういえばアンリはそっと震える雅の事を抱きしめた。拒もうとする雅の体をグッと押さえつけるかの様にアンリはその腕を離さなかった。
「震え止まったら離すから」
「…もぉ…大丈夫だって…!」
「嘘つかないでくれる?」
「…ッッ」
「大丈夫。これ以上の事はしないから…泣くでも怒るでも、愚痴ってくれてもいいし、…なんでもいいから…」
そう言ってアンリは腕の中の雅がフッと力が抜けるのを感じてゆっくりと抱きしめる腕を緩める。
「…ッッ…アンリの癖に…」
「なんとでも言ってよ。別に今更だし」
「…ッ…」
声を押し殺す様に少しだけ涙があふれる。そんな雅をただ黙って落ち着くまで抱きしめていたアンリ。少ししてスマホが鳴った。
「…ッ…」
ゆっくりとアンリの腕から離れそのメッセージを見ればミキからだった。『どこにいる?!』と…
『加賀の所に今から新条行くから、一緒に乗せてってもらいな?!』
そういわれたメッセージを見てアンリはフッと笑いすっと立ち上がる。
「…行って来たら?」
「…でも…」
「今日明日ととりあえずは休みでしょ?」
「でもデータのまとめとか…」
「それって今じゃなくても出来るでしょ」
「…ッッ」
「…・・あー、もう!」
雅の手からアンリはそのスマホを取ればカチカチっと打ち込んでいく。終われば雅に手渡してくる。