第21章 狂おしいほどの夜
少しぶれつつもタイムは加賀が圧倒的の速さでトップに躍り出る。寄せ付けることも無いままに予選も終わっていった。
「…やっぱり早いよな…加賀」
「そうだね」
「風見先輩が2秒以上離されてるんだもん…」
「ん、アスラーダがあれだけ離されるのも珍しい…」
「本当にね」
そう話しているアンリと雅。予選二日目も終えてミーティングが始まる。
予選結果はPPが加賀、2位がランドル、3位にハヤト、アンリは7位だった。
「…差がすごいな…」
「そうね…」
「このタイミングでAOIが新機投入とはな…」
「雅ちゃんも知らされていなかったみたいよ」
「当然だろ。加賀が話すとも思えないし恐らく真坂も聞かないだろうしな」
「解っていたのね、修さん」
「信頼関係あってだろう」
「そうね」
クレアと修は小さく笑いながらもその目は二人とも笑ってはいない。いかにこのタイム差を縮めるか、どうするか…の試案に入っていた。
データの整理をしていた雅。トップ三人とアンリのデータの比較をすればその差は一目瞭然だった。それでもアンリが適当に走っているわけではない。全力での『この差』だったのだ。
「…マシンの性能ってのもあるんだろうけど…」
トップスピードを調べれば確かにアスラーダや加賀の新機に比べればガーランドは劣る。ただ、ユニオンやシュトルムツェンダーとはさほど変わらない。
「…後は経験の差ってところかも…後は…アンリの苦手なところ…」
色々と調べてみるものの、それでもうまく結論に至ることはなかった。