第5章 安土城城内
夕餉を食べ終え、琴葉と部屋でくつろいでいると女中さんから信長様が呼んでいると教えてくれ、今私達は天主にいる。
「貴様らの働きは秀吉から聞いている。これからも励め」
相変わらず偉そうだが前よりかは怖くないと思えるようになった。
でも、この人がただ励ましの言葉を言うために呼んだなんて考えられない‥
「賭けの話をまだしていなかったな。内容は貴様らが俺の好物を当てられたら、貴様らの勝ちだ。だが、勝負は一回切り。二月後までに考えて献上することだ」
賭けの内容を聞いて危ないことではないとわかり安心したがチャンスは一回‥これを間違えると帰れなくなる‥そう考えると中々にハードルが高い。
「‥あの、好物はどんな類いのものか教えてくれませんか?何も手掛かりが無いのは流石に当てれないです。」
「少し譲歩してやろう。‥菓子類だ」
なるほど、菓子類か。それにしても意外だな、あまり甘いのは好まなそうなのに。
「わかりました。二月後までに好物を見事に当て、献上してみせましょう」
琴葉が浮かない顔をしているのに気づかないまま、賭けは始まった。
自室に戻る途中、琴葉がずっと静かでまた体調がが悪くなったのかと思い、声を掛けたが違った。
「私さ、この時代に残りたい‥」
「‥え?どうして、?」
琴葉は拙いながらも説明してくれた。
「実は私、家康のところで看護の勉強してて、なんかいつの間にか気になってて、彼に会うたびに嬉しくなって‥好きになってた‥自分でも、驚いてる。
‥‥ダメだよね。せっかく注意してくれたのに、この気持ちはもう蓋をするよ。だから‥」
琴葉が言い終わらないうちに私は抱きしめてた。
「琴葉、その気持ちは蓋をしちゃダメ。こんなに好きになった人を逃しちゃダメ。もう訪れない恋かもよ?だから、後悔しないようにして‥!」
強張っていた琴葉の身体は次第に弛んで、私の背中に腕を回した。
「よかったぁ。止められるたらどうしようと思った‥美桜、ありがとう!
その晩私達は琴葉の恋バナについて話し、いつの間にか朝日が昇っていた。