第3章 鬼に稀血
どんなに嫌悪の目で見られても。
「お願い……もう1人じゃ生きていけない…。」
異形の世界でただ1人の人間。
同じ体温で同じ血を流す。
鬼じゃない人間と出会えるなんて考えた事もなかった。
知ってしまったこの気持ちが虚無になるなら。
この命が尽きようと構わなかった。
仁美は大きな目に涙を溜めて実弥を見上げた。
顔を紅潮させながら、荒く息を吐く。
仁美は実弥が今どんな状態なのか分かっていた。
だけど陵辱される辛さを誰よりも知っているから。
仁美はただ彼に乞う事しか出来なかった。
仁美の柔らかい体が自分にしがみ付いてくる。
それだけで意識が飛びそうなほど興奮した。
コレが血鬼術でも構わないとすら思った。
「……はぁ……ちくしょう……。」
実弥は心底嫌そうに顔を歪めた。
それでも伸びた手は仁美を掴んで、彼女の体を自分に引き寄せた。
仁美の唇に口付けすると、途端に体中の毛穴が開く程の衝撃が走った。