第3章 鬼に稀血
昂揚すると言うのはこう言う事を言うのだろう。
体の熱さが心地よくて、視界はどんどん狭まるのに、実弥の姿だけがハッキリ見えていた。
今自分の血をどう使うか急に理解して。
なんでも出来る気持ちになった。
ああ…きっと…。
人間から鬼になる時はこんな気持ちなのだろう。
仁美は実弥の日輪刀を手に取ると、躊躇いなく自分の腕を切った。
だけど一瞬散った血飛沫の後に、すぐに傷は治ってしまった。
よく見たら、地面に叩きつけられた傷さえ無くなっていた。
仁美は日輪刀の刃を握った。
このまま指を切り落としたって『大大大』だろう。
仁美が手に力を入れて刃を握ろうとした時に、仁美の腕を実弥が掴んだ。
「………お前………。鬼か………。」
実弥が仁美を見上げると、仁美の後ろには月が光っていた。
そしてその月の光に照らされて光る赤い目。
仁美はこの時初めて鬼の身体的な片鱗を見せた。