第2章 輝石の額当て
「…行かないで…ここに居て下さい……。」
天元の胸元の服を掴みながら、仁美の手は震えていた。
それは先程までの発作では無く…。恐怖からだった。
心のバランスを崩せば発作を起こし、記憶の恐怖から体が震えて。
呼吸が出来るのは強い人間が側にいるその一瞬だけだった。
「俺の嫁達が同じ屋敷に居るのにいい度胸だな。」
「はぁ……ごめんなさい……ごめんなさい…。」
嗚咽の混じった声で仁美は天元に謝った。
それでも彼を手放す事が出来なくて必死に彼に縋った。
彼の唇にキスをして、彼の服を剥いで胸元に唇を押し付けた。
そうしなければ天元を自分の元に止める事が出来ないと思っていた。
「行かないで………お願い……。」
仁美の言葉と同時に天元の顔に仁美の涙が落ちた。
天元に一方的に押し付ける感情に、自分自身を嫌悪しながらも。
彼がこの部屋を出ない様に必死だった。
「っ……。」
天元の体に跨っていた仁美に、刺す様な固い感触がした。
「…………………。」
その凶暴さに天元の体に擦り寄っていた仁美の動きが止まった。