第7章 鬼の宴
横になる無惨の胸に顔を埋めてみた。
そうすると彼は何も言わないでもその肩を抱いてくれた。
鬼に変貌していない彼はいつも美丈夫だった。
それが目が赤くなり牙が生えても変わらない。
仁美は無惨の美しい顔にいつも見惚れていた。
自分から男性に触れるのははしたないの分かっていても、つい手を伸ばしてしまう。
無惨から触れてくれない時はいつも仁美から無惨に触れていた。
そして顔を近付けて口付けしてもいつも優しく受け入れてくれる。
結局人を食う鬼だと分かっていても、その心は変わらなかった。
「…お前は可愛いが淑女にはなれないな。」
そう言われて少し顔を赤く染めるが、彼が望んでいるのはそんな女性でも無い。
仁美が淑女でも娼婦でも同じ様に可愛がるだろう。
その内無惨の手は仁美を押し倒す。
彼から求められる口付けも同じ様に胸をときめかせた。
口付けをして抱き合い胸が焦がれるのは無惨だけだった。
他の鬼に何度抱かれてもこの様な気持ちになる事は無い。
この時間だけが仁美の心を癒す時間だった。