第4章 赫き炎刀
「……うん……仁美…。」
義勇は仁美の言葉なんて気にしないで顔を俯かせた。
そして体を傾けて仁美の肩に顔を埋めた。
「…また会いに行く…。会いたい…。」
仁美は肩に義勇の体温を感じた。
本当に酷い怪我をしたのだろう。
義勇からは血の匂いと消毒液の匂いがした。
仁美は殆どの隊員から同じ匂いがするのを知っている。
傷まみれで、体躯の何処かを欠損していることもある。
それでも彼らは鬼に立ち向かっていく。
そんな彼らの為に藤屋敷を任せられて、仁美はその任務に全てを尽くしている。
実弥はそんな2人を見ながら、2人の間に入る事はしなかった。
仁美は自分にもたれる義勇の体に触れようとはしていなかった。
しかし顔を俯かせて義勇を見ている仁美の顔を見て、実弥は理解した。
ああ…。
この2人は決めたのだ。
鬼と毎日対峙して、明日愛おしい人に会える保証なんてない。
だからせめて、そんな相手との逢瀬の時間。
それは明日を生きる糧になる。