• テキストサイズ

メンヘラヤンデレ彼氏からの溺愛調教

第9章 誕生日




《side 莉央》



なんとなくわかってた。
柳瀬の家庭環境が劣悪だったことも。
中学の時には、『親』じゃない誰かに育てられていたことも。
中学の頃。
柳瀬はいつもぼんやりと窓の外を見ていて。
無気力で。
死んだような目をしてた。
何もかも諦めているようで。
生きることすら諦めているようにも思えて。
なんとなく目がいった。
あたしにも親がいなかったから。
育ててくれた大人の人はたくさんいたけど、授業参観にも運動会にも、出席できるような人たちではなかったし。
そりゃ。
子供心にイキったりもしますよ。
全てどうでも良くなって。
何もかも嫌になって。
夜遊びが、始まったのはこの頃。
子供と大人の狭間の、微妙なお年頃。
心配してもらいたくて。
誰かに叱って欲しくて。
バカなこともたくさんした。
声をかけられるまま着いてって。
どんなことになるかなんてわかってたのに。
それでも誰かは助けに来てくれるって思ってた。
だけどそんな現実存在しない。
どんなに泣いても叫んでも、助けなんて来なかった。
知ってるはずなのに。
あたしがどこに『いる』のか見えてるはずなのに。
誰も助けになんて来てくれなかった。


「…………まだガキじゃん、そいつ」


泣き喚いて叫んで全力で逃げた先。
声をかけてくれたのは。


学校の、同級生だった。


後ろの路地から声がして、あたしの横を通り過ぎる時に一言だけ。
「全力で走れ」
小さな声でそう言われたのを覚えてる。
「振り向くな」
とも。
全力で走りながら、曲がり角を曲がる瞬間。
男2人に連れられて、同級生の男の子が暗闇に消えるのを見た。
だからほんとはあたし。
知ってる。
柳瀬が、男の人、経験あること。
暁と何かあったんだろうことも。
ほんとは知ってるの。
柳瀬が時々吐きそうにのざえてることも。
昔のこと思い出すたびに壊れちゃいそうになる自分を抱きしめて守ってることも。


知ってるんだ。


/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp