【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
***
障子の隙間から、すでに白々とした朝の光が差し込んでいた。
隣ですーすーと寝息を立てているを見る。
髪は乱れ、頬には涙の跡が乾いて張り付いている。
布団から覗く肩や首筋には、僕がつけた赤い痕がいくつも咲き乱れていた。
「……あは、またやりすぎちゃった」
苦笑しながら、その小さい肩に布団を掛け直す。
加減しようとは思うんだけど。
スイッチが入ると、どうしてもブレーキが効かなくなる。
(……だって、可愛すぎるでしょ?)
今日の旅館でのあれこれが、浮かんでくる。
大浴場の入り方がわからないって不安そうに僕を見上げた顔。
妹って言われてむすっと拗ねた顔。
懐石料理を前にして、目をきらきらさせてた顔。
僕との写真を見返して、にやにやしてる顔。
一緒にお風呂入る時の必死の抵抗も。
全部全部全部、かわいくて。
『あの子、地味じゃん』
『釣り合うわけない』
僕たちを知らない、誰かの言葉。
地味……ねぇ。
こんなにころころ表情が変わって。
あんなに泣いて、感じて、僕の腕の中で何度も果てて。
僕の心をここまで持っていく子の、どこが地味なんだよ。
まだ僕たちの関係を「保護者と子供」だなんて思う奴がいたら、眼科を紹介してやりたい。
僕にとっては、可愛くて、欲しくてたまらない一人の女性なのに。
「……せん、せ……」
が小さく唸って、無意識に僕の方へ擦り寄ってきた。
僕の胸のあたりに額を預けて、安心しきった寝顔。
その愛おしさに胸がぎゅっとなり、そっと彼女の頬を指の背でなぞった。
「……ねえ、」
返事がないのを分かっていて、わざと問いかける。
「いつまで、『先生』って呼んでんの?」
が僕のことが好きなのは伝わってる。
身体も、心も、もう何度も重ねてる。
でも、その呼び名だけが、薄い壁みたいに僕たちの間に立ちふさがっている気がして。
「……早く、名前で呼んでよ」
祈るように、彼女の額に口づけを落とした。
その願いが、夢の中の彼女に届くことを願いながら。
僕も目を閉じて、の寝息に耳を澄ませた。