【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第6章 「しのぶ恋なれ、夏の宵**」
空港のタクシー乗り場からハイヤーに乗って、車は山のほうへ走り出した。
最初は街の景色だったのに、気づけばまわりは一面の草原。
こんなに広い草原、初めて見たかも。
なだらかな丘がどこまでも続いてて、夕陽がそれを金色に染めていた。
「……きれい……」
思わず、窓に顔を近づけて見入ってしまった。
すると、運転手さんがバックミラー越しに笑って言った。
「お客さん、ラッキーだよ。今の時間が、“ミルクロード”から見る夕日が一番きれいなんだから」
「ミルクロード……? 可愛い名前ですね」
「この辺りは一面牧場でね。木が少ないから空が広いでしょう。あ、見て、あれ。赤牛がいる」
言われたほうを見ると、夕陽の中に牛の影がのんびり並んでた。
「ほんとだ……」
黒いシルエットが、なんかの映画のワンシーンみたい。
隣で足を組んでいた先生が、サングラスを外して胸ポケットにしまった。
「僕も見るの初めてだけど、迫力あるね」
「えっ、先生も初めてなんですか?」
ちょっと意外で振り返ると、先生も楽しそうに景色を追っていた。
「うん。熊本の任務って、僕も今回が初めてだから」
先生がこっちを向いて、片目を軽く閉じた。
「初めての場所に、と一緒に来れてよかったよ」
「……っ」
“初めて”を、私と――。
そんな言い方ずるい。ずるすぎる。
(……なにそれ、ほんともう……)
そんな特別みたいな言い方されて、何も思わないわけないのに。
口元が緩みそうになるのを必死でこらえて、
私はまた、窓の向こうの夕焼けに視線を逃がした。