【呪術廻戦/五条悟R18】── 花冠の傍らで ──
第4章 「咲きて散る、時の花 後編**」
「……五条さん、あの……」
唇が重なったまま、どうにか絞り出した声はかすれて震えていた。
「……なんだよ」
名残惜しそうに、唇が離れる。
けれど、距離はほとんど変わらなくて、まだお互いの息がかかるくらい近かった。
「未来の俺を裏切ることになるとか、そういうの、気にしてんのか?」
五条さんが小さく鼻を鳴らすように笑って、
「俺も“五条悟”なんだから、浮気にはならないだろ」
「そ、そういうことじゃなくて!」
思わず声を上げると、五条さんは一瞬だけ困ったように眉をひそめて、真剣な声で言った。
「俺は、ちゃんとのことが――」
「私、なんでまだここにいるんでしょうか?」
私の問いに、五条さんは目をぱちくりと瞬かせた。
本気で予想してなかったみたいな、ぽかんとした顔。
「だって……呪霊、祓いましたよね?」
「こんなに時間が経ってるのに、まだ……ここにいて……」
私は視線を落とし、ぎゅっと胸元を押さえる。
時屍獣を祓えば終わるんじゃなかったの?
「そういえば、そうだな」
「じゃあ、どうして……?」
問いかけた私に、五条さんは答えなかった。
「……一度、高専に戻りましょう」
「先生は……もしかしたら、もう未来に戻ってるかもしれないし」
私はベンチから立ち上がり、一歩踏み出したその瞬間。
「……」
ふいに、手首を掴まれた。
「っ……」
驚いて振り返ると、五条さんが真っ直ぐな瞳で私を見つめている。
「こっちにいることになるんだったら――それはそれで、いいんじゃね?」
「え? 何言って……」
「俺は……それでもいいと思ってる」
言葉よりも、握られた手首のぬくもりが熱くて。
五条さんが少しだけ顔を近づける。
「のこと、もっと知りたい」
耳元に届いた声はさっきのキスの時よりも、ずっと熱を帯びていた。
「っ――」
鼓動が跳ね上がった。
顔がどんどん熱くなっていく。
「そ、それは……だからって……!」
言葉にならないまま、顔が真っ赤になって視線を逸らす。
だけど、掴まれた手首はほどけないままだった。
そのとき――