第1章 光を厭い 光に憧る
「公安の立場なら承諾せざるを得ない状況はいくらでも作れます。ヒーロー免許の剥奪をちらつかせるだけでいいんですから」
公安であればやりかねないことを白失は知っている。
なぜならこれまで白失が容疑者から消してきた記憶には、違法行為と捉えられかねない尋問も多数含まれている。
普段からそんなことを行なっている公安ならホークスを脅すことだって簡単にやるだろう。
「何を言おうと決まったことよ、これ以上食い下がるならあなたをこの捜査から外さないといけなくなる」
「……分かり、ました」
そういう言葉が出てくるのなら引き下がるしかない。
ここで時間をかけても意味がないと悟り、主任の執務室を出て次に向かったのは会長秘書室。
主任の口振りから会長に気を変えてもらうしかないと考えたからだ。
しかし、行った先では門前払いだった。
そもそも白失自身は公安職員といっても端くれに過ぎない。
そんな下っ端では会長への面会すら叶わなかった。
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どうしよう、
どうしたらいい?
どうすれば捜査の人員を変えられる?
必死に考えを巡らせても、指揮命令権もなければ人脈もない。
その上、もう時間もない。
ホークスは既に内偵に向けて動き出しており、今朝敵連合と最初の連絡を取ったと聞いた。
八方塞がりだ。
私には何もできないのか……
犯罪者の娘である私には何も……