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【ヒロアカ】re:Hero

第14章 仮免の向こう側【R18】


開始の合図が鳴った瞬間、周りが一斉に散った。
私の周りに、視線が集まるのがわかる。

――やっぱり私を狙う。

「星野だ!取れ!」
「マジかよ…あいつ一人で来てるぞ!」

数人が一気に距離を詰めてきて、足音と掛け声が砂煙に混ざる。

走る勢いを地面に蹴り込んで、足を止めずに飛んだ。
背中に翼を広げた瞬間、空気が変わる。

「飛んだ!?――誰か落とせ!」

誰かが声を張り上げるけど、下からの牽制は届かない。
冷たい風が羽根を持ち上げて、一気に視界が開ける。

上空から見下ろすと、会場に散らばった人影が、蜂の巣みたいに動いてる。

「上だ!撃て撃て――っ!」

光と氷を指先に集めて、息を吸い込む。
刃のように尖った冷気が空気を裂いた。

一瞬の閃光とともに、下の影が一人、二人と肩を押さえて崩れていく。

「は!?ターゲット外された――!」
「近寄れねぇ!何だあの速さ…!」

残った子たちが走って散っていくのが見える。
でも翼を揺らせば、どこに逃げても全部見える。

「来るな!あいつやべぇって!」

風を裂くたびに、熱が背中を押す。
次の群れを視界に捉えて、氷の矢が空を滑る。

命中した肩のターゲットが転がる音と、小さな悲鳴。
その声すらも風がさらっていく。

もう誰も私の正面には立てない。

試験官の立つ高台が遠くに見える。
白い上着の袖が、はためいて止まったまま。
唖然とした顔が見えなくても、空気でわかる。

――まだ十分も経ってないのに。

羽ばたきと一緒に、残った熱を最後の矢に込める。
弾けた光が一斉にターゲットを穿つ。

「嘘だろ…もう終わりかよ…」

地面の声が遠くでにじんでいく。

私はまだ着地するつもりなんてないまま、風の中で笑った。
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