第14章 仮免の向こう側【R18】
私の背中にまだ残ってる、焦凍の手の温もりと、勝己の声の余韻。
真堂くんが去って空気が落ち着いた瞬間、後ろから小さくザワッと声があがった。
「……なぁ、今の……どーいうこと……?」
耳に届いたのは耳郎ちゃんの声。
振り向くと、三奈ちゃんがにやっと笑って私の肩に肘を置いてくる。
「ねぇねぇ想花、付き合ってんの?爆豪と?それとも轟?どっち?え、両方?どゆこと?」
『ち、ちが……!ちがうってば……!』
私が慌てて手を振ると、お茶子ちゃんまで前に出てきて頬をぷくっと膨らませた。
「でもさ、昨日さ、帰ってきた時顔真っ赤やったよ?
どゆこと?え?誰とおったーん??」
『え、ちょ、なにそれ……いやほんと違うから!?』
「えーーー?じゃあ爆豪の“人のもん”はどういう意味だってばさ?」
耳元でひそひそと、でもめっちゃ笑顔で三奈ちゃんが突っ込んでくる。
「それなー!轟くんもさー、あんな自然に手引っ張って……」
近くにいた葉隠さんも、透明なのに声がキラッとしてる。
『だからほんとに違うってばぁ……!』
必死に否定しても、三奈ちゃんが私の背中バシバシ叩いてくる。
「想花さぁ〜、ヒーロー仮免よりも恋愛仮免も取らないとねぇ?あー羨ましい!青春だわぁ!」
『やめてーーー!もう!!』
笑い声とひそひそ声が、試験前だっていうのに私の周りだけ無駄に騒がしい。
遠くで勝己が「うるせぇぞ!」って一喝してくるけど、全然説得力ないし。
そして焦凍は……って見れば、
何事もなかったみたいな顔で私を見て、小さく肩をすくめてる。
(……やっぱり、私の平和は遠いかもしれない……。)
でも。
みんなが笑ってるこの感じが、ちょっとだけ嬉しいんだよね。