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【ヒロアカ】re:Hero

第13章 この手が届くうちに【R18】


『……あったかい』
そのはずなのに――

どこか、怖かった。
この温もりを抱きしめることが、
何か、とてもいけないことのように思えて。

ホークスの腕の中。
焦凍、勝己、緑谷くん、切島くん――
皆が囲むこの場所は、確かに“帰ってきた場所”なのに。

(なのに、どうして……こんなに苦しいの)

背中に回された手が、
さっきまでの安堵をかき消していくように重くなっていく。

『……っ……』

思わず体が、ぴくりと震える。
気づかれないように、息を殺す。
でも、すぐにわかってしまったみたいだった。

「……想花?」

ホークスの声。
優しいのに、触れられるのが怖くて、
私の中で小さな拒絶が膨らんでいく。

(私……触れられちゃいけない気がする)
(だって……私なんか、今のみんなの側にいちゃ……)

自分でも、何に怯えてるのか、はっきり言えない。
言葉にした瞬間、何かが壊れてしまいそうで。

ただ、怖いの。
この手を取ってくれる彼らが、
私に触れたことで、
――何か、大切なものまで汚してしまいそうで。

『ごめん……私、ちょっとだけ……ひとりになりたいかも……』

そう言うのが、やっとだった。

驚いたように目を見開くみんなの顔が、
ぼやけていく。
自分の中にある、曖昧で、でも確かな“何か”が、
どんどん胸の中を満たしていく。

それでも、誰も責めなかった。
誰も、何も言わずに、そっと距離を取ってくれた。

……だから余計に、胸が痛んだ。

(優しさが、怖いよ……)
(私なんかに、そんなふうにしてくれないでよ)

涙が、頬を伝った。
それは、誰にも気づかれないように。
でも、確かに零れていた。
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