第3章 ヒーローの初試練
次の種目はボール投げ。
グラウンドに置かれたボールを手に取るまでの間、生徒たちの間にじわりと緊張が広がっているのを感じた。
爆豪勝己が眉をひそめ、鋭い目で私をじっと見つめてきた。
「おい、星野。速さだけじゃダメだ。飛距離だ。ちゃんと遠くまで投げられんのか?」
『あは、もちろん!』
私は柔らかく笑いながら答え、腕を大きく振り上げて全力でボールを放った。
球は伸びやかに空を切り、思った以上に遠くへ飛んでいく。
「おおっ……すげえ……!」
ざわめく声のなか、爆豪の眉が一瞬きつくなるのを見たけど、どこか興味を持っているようにも感じた。
そのすぐそばで、緑谷出久が私の様子をじっと見つめていた。
彼の瞳には驚きと、私に向けられた少し優しい光があったように思う。
爆豪は息を吐きながら、わずかに口角を上げて言った。
「ふん、こんなもんか……まだまだだな」
『あはは、負けないよ!次も頑張るね!』
私の明るい返事に、爆豪は少しだけ目を細めて眉を寄せていた。
その表情から、何か複雑な感情が混ざっている気がした。
少し離れたところで、相澤先生が静かにこちらの様子を見守っている。