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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第21章 「可惜夜に眠る 前編」


窓の外に視線を向けると、
高専の校舎、石畳の道沿いに並ぶ木々が少しずつ後ろへ流れていく。
それをぼんやり眺めながら、ふと思う。


(そういえば、合宿先ってどこなんだろう)

 
野薔薇ちゃんは、たしか「五条家の別荘」って言ってた。
 

(……別荘って、海の近く……?)

 
“海”。


その言葉が浮かんだだけで、胸の奥がひやりと冷えた。
あの光景が、また押し寄せてくる。


潮の匂い。
濁流の音。
目の前でさらわれていく、世界の色。


(っ……)

 
ブレーキをかけるみたいに、私はまぶたをぎゅっと閉じた。


(……大丈夫、大丈夫)


そう自分に言い聞かせるように、深く呼吸を整える。
いつものように。震えないように。


最近は、ここまでじゃなかった。
任務で港に行っても、友達と海の話をしても、やり過ごせていた。
少しずつだけど、平気になってきた。
――そう、思っていたのに。


ふと隣を見ると、先生は無言のまま前を向いていた。
目隠しで、表情はよくわからない。 
 

(……もし、先生に “あの日”のことを話したら)
 
(きっと「のせいじゃない」って、言ってくれるに決まってる)

 
……だけど、それでいいの?
私だけ、そうやって“許されて”、進んでいって。
あの日、私の前から消えた二人の笑顔と一緒に、私の心の一部は凍りついたままだ。
そこに、ずっと置き去りの私がいる。

 
気仙沼に行って思った。
街は綺麗になっていて、知らない建物が建っていて。
私の記憶の中の風景は、もうそこにはなかった。

あそこで暮らす人たちは、止まった時計の針をちゃんと動かそうとしていた。
前を向いて、進もうとしている。

 
なのに、私は。


私は……












そのとき――

膝の上に置いてあった左手に、何かがそっと触れた。


(……え?)
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