第19章 「死に咲く花」
「……えっちで、気持ちいいのが大好きなだよ」
「っ……――!?」
一気に顔が熱くなるのがわかった。
「せ、せせせ先生、ちょっ……っ、そんなことないもん!!」
「えー? 昨日、最後イキっぱなしだったのに?」
にやっと笑ったその顔は、いつもの“最強の教師”の顔で。
「先生のばかっっ……!!!」
思わず叫びそうになって、あわてて口を押さえた。
空港で大声出すなんて、絶対ダメなのに……
なのに先生は私の様子を見て、可笑しそうに笑っている。
それがなんだか悔しくて。
(……でも)
その笑い声に救われてる自分が、確かにいた。
先生は私の頬に手を添えると、顔を近づけてきた。
「……っ、だ、ダメ……誰か来ちゃいます……っ」
顔を背けようとしたけど、先生の手は逃がしてくれない。
「こんなとこ、誰も来ないよ」
「み、見られたらどうするんですかっ……!」
「彼氏が彼女にキスしてるだけ。何も問題ないでしょ?」
ふざけたような口調とは裏腹に、先生の顔が本気で近づいてくる。
でも、今は……。
「っ、ちょ……待って……!」
自分の口元を手で隠した。
「さ、さっき、吐いちゃって……だから……っ」
何度も水ですすいだが、そんなの関係ない。
こんな状態で先生とキスなんて……やだ。
「……すすいだけど、口の中、汚いから……」
そう言うと、先生は私が持ってたペットボトルの水を取りあげ、キャップを開けて――。
「じゃ、僕が洗ってあげる」
「――えっ?」
言い終えるより早く、先生はその水を少しだけ口に含んだ。
それから、何のためらいもなく、私の方へ顔を近づけてくる。
「ま、まって……っ、え、ほんとに……っ」
視線がぶつかる。