第12章 「極蓮の魔女」
でも、それはただの植物の記述だったり、
当時の風流を綴った詩に過ぎなかったりすることが多く――
(違う……これも違う)
何度も心の中で打ち消しながら、必死に言葉を拾っていく。
時間だけが、刻々と過ぎていった。
窓のない書庫の空間。
しんとした静寂のなか、先生と私が紙をめくる音だけが聞こえる。
(……集中しなきゃ)
そう思っても、目が疲れてきたのか文字が霞んできた。
肩や首もじんわりと重い。
(どのくらい……経ったんだろう)
ふと腕時計に目をやると、もう四時間以上が経過していた。
思っていた以上に時間が経っていたことに驚くと同時に、まだ何も手がかりが見つかっていないことにも焦る。
「……ふぅ」
小さく息を吐き、文献をめくる手を止めた。
重ねてきた巻物の端に指を添えながら、静かに目を閉じる。
(どうしよう、このまま何も見つからなかったら……)
時間と焦りが、少しずつ心を締め付けてくる。
「……、疲れたら言ってね?」
その声にはっと顔を上げると、
書架の向こう、椅子にもたれている先生がこちらを心配そうに見ていた。
手には開きかけの巻物。
サングラスを外し、眉間に指をあててマッサージしている。
「大丈夫です」
そう答える声が、自分で思っていたよりも硬かった。
けれど、先生に気づかれないように少しだけ笑ってみせる。
先生は巻物を閉じて、テーブルにそっと置いた。
「わかってたけど。そう簡単には、見つからないよね」
「……でも、きっとここに何かある……そんな気がするんです」
それは、自分に言い聞かせるような言葉。
そうでなければ、この場所に来た意味がなくなってしまう。
あの夢も、悠蓮の記憶も、今の私の力も――
全部、どこかで繋がっている気がするのに。
先生は、そんな私を見てふっと笑った。
「そうだね。ま、今日は泊まりだし焦らずやろうか」
そして、椅子から立ち上がると――
「とりあえず、休憩!」
そう言って、私の隣に腰を下ろした。