第12章 副隊長、さようなら
私のところまで来た彼は、膝に手をつき一生懸命息を整えている。
「めっちゃ探したやん!!なんやの!?なんかあかんかった?ちゃんと言うてくれへんと、僕アホやからわからへん。嫌なとこ直すから、離れていかんとって…。」
僕には君が必要なんやと手を握られ、どこに行かせないというように力を込められる。
好きって言ってよ…。
「君のこと…あんなに好きや思っとったんに、今は愛しすぎてどうしたらええかわからんのや。離したない。」
え?もしかしてあの時言おうとしてたのってそれ?
でもこのちゃんにあんな風に触れて…。
「この手…この手でこのちゃんに触れてた。」
私の手を握る手を持ち上げて見つめる。
見とったの?と驚かれる。
「え、聞いとった?小此木ちゃんに呆れられる程、君の可愛ええところ言うとったんの…。」
「え?……いや、それは知らない…私が聞いたのは、自分の気持ちがわからない、私のこと好きだと思ってたのに…まで。」
彼は突然、安心したように笑い出した。
「あはははっ!なんや、勘違いしとっただけやないか!君のこと愛しとる。小此木ちゃんに触れたんは…ほんまにごめん。君のこと考えとったら、つい…。」
私だと思って無意識にしてしまったと…。
朝方まで帰って来なかったのは、私の可愛いところを語るのに夢中になっていたと…。
なにそれ…だんだんと顔が熱くなり、彼のことを見ていられなくなった。
「ほんま可愛ええな。好き…だけやと足りひん。ほんまに愛してんで。」
顔を隠して屈んだ私に合わせ彼も屈み背中を擦る。
そんな彼の胸にトン…と頭を預け、私もと呟いた。