第1章 1
◇
──23:02
「お…終わった…!!」
入力を終え、内容を保存して、バックアップも取った。
力が抜けていた私はデスクの置き時計を見て、青くなった。
「やだっ!!23時過ぎてるじゃないっ!!」
慌ててパソコンの電源を落としながら立ち上がり、デスクの上を片付けて荷物をまとめる。
「も~、shujiさんの言う通り、車で通おうかな…っ」
フロアの窓の施錠を確認して、ドアにも鍵をかける。
そして急いで駅へと走った。
今は23時17分、終電が出るのは23時25分。
そして、駅までは歩いて10分……。
…走れば間に合う距離なのに、今日に限って私は、ヒールのある靴…!!
◆
──23:17
俺は徐々にスピードを落とし、料金所のゲートをくぐった。
事務所にあった彩夏の履歴書を見て、彩夏のアパートも確認してある。
ナビにも入力済みや。
…プライバシー?何の話や。
あとはナビの指示に従って、ここから彩夏のアパートに向かうだけ。
……まだ23時過ぎ、しかも国道を走っとるんに、車の通りがめちゃくちゃ少ない。
……灯りがついてる店がない。
「…めっちゃ暗いやん…」
この暗闇の中を、彩夏は毎晩歩いて帰っとるんやろか…。
「……怖っ」
道路の脇に墓石が見えた。
そう、ホントに化け物が出てきそうな雰囲気が漂っとる。
「………」
田舎、田舎と言っとったけど、まさかここまで田舎だとは思わんかった…。