第32章 迷いと道
時間少し前に悟浄と一緒に並んで理世も食堂の前に着いた。
「いたいた!!朝振りじゃん!理世!」
そう言ってきたのは悟空だった。
「…本当に。大丈夫ですか?体調は…」
「ん、大丈夫。ごめんね?心配かけて…」
「大丈夫ですが…まぁ、一緒に居る人が人なので…」
「あ、はは…」
「いい加減にしとけよ。」
「三蔵?」
「かまれ過ぎだ」
「…ッッ」
「フッ」
小さく笑う三蔵。その相手に悟浄は声をかける。
「…なぁ、三蔵」
「なんだ」
「……」
「なんだと聞いている」
「指一本でも触れんなよって言ったろ…」
「だったらなんだ」
「なんで寝ぼけて抱きしめてんだ」
「…ぁあ?」
「なになに?!三蔵理世抱きしめてたわけ?」
「うるせぇよ。覚えてねぇ」
「…そういう事にしといてやるよ。」
ポンっと肩を叩いた直後、すれ違いざまに悟浄は耳元で小さく話した。
『理世から聞いた。キスの事は…突っ込まねぇどいてやる…』
そう言われて三蔵は理世に視線を送る。
「…あのバカ…結局自分で話してんじゃねぇか…」
ため息と同時に四人の後を後ろから三蔵は着いて行くのだった。
***
食事を終えて、出発の時間が迫っていた時だ。
「失礼します。」
「まだ何かあるのか」
「いえ、こちらを…」
そう言われて長から手渡されたのは当面の食料と飲料だった。
「…ありがとうございます」
「いえいえ、三蔵法師様と巫女様のおかげもあり、皆活気に満ち溢れました…本当にありがとうございます!」
そういわれながらもジープに押し込まれ、深々と頭を下げている長達。会釈をして一行は街を後にした。
「…にしてもなんだかいろいろとあったなぁ…」
「お前だけだろうが」
「三蔵、お前がそれ言っちゃうわけ?」
「まぁまぁ。どちらにしてもおいしいものをたくさんいただけたのは嬉しい事ですよね」
そう話しながらも西への旅路を進んでいくのだった。