第4章 襲撃、守る腕
それから長いような、短いような不思議な感覚の中、気づけばあたりは異様なまでの静けさに包まれていた。
「おーい、終わったぜ?」
「…ッ…ごじょ…ぉ」
「ん?…・・って」
その声を聞いた理世は悟浄の背中からきゅっと巻き付いていく。他の三人も二人のもとにやってきた。小さくため息を吐いた悟浄は巻き付くその手にそっと自身の手を重ね、ゆっくりと話し出す。
「もう大丈夫だから、言ったろ?妖怪には指一本触れさせねぇって…」
「ほぅ?半妖なら触れてもいいってことか」
「へ?」
「なら僕も悟空も理世には触れませんねぇ…」
「いや、そうじゃねぇって…」
「あ、…の…」
「はい?」
「…妖怪…?」
「今更何言ってんだ」
理世はふと顔を上げて、顔を見つめる。しかし、そこには先ほどの気持ちの悪い妖怪たちではなく、いつも通りに笑いかけてくれる八戒と悟空、そして悟浄と三蔵がいた。
「…おい、…おーい、聞いてんの?」
「あ、えと…それは…」
「初めて聞いたって顔だな」
「それは…」
「そのまんまだ、でも、俺らがいたらケガさせねぇよ」
「出来ねぇ事安易に引き受けんな。」
「へー?」
「あの、…!」
「ん?」
「…助けてくれて…ありがと…」
「どういたしまして!」
「てかそのバカがおせぇから、危ない目にあっただけだろ」
「あー、そうですね」
「そうだそうだ!!!」
「…というか、さっきの話、僕と悟空が妖怪なんですよ。で、悟浄がハーフで、三蔵は三蔵ですよ」
「…もっと説明方法なかったのかよ」
「てか、今ここでかよ…」
いろいろと突っ込みどころ満載とは言えど、理世は引いていくこともないままに笑っていた。
「笑ってんな」
「へ?」
「妖怪が怖いって震えてただろうが」
「あの気持ちの悪い妖怪がって話なんです…」
「ほぅ?」
「みんなは気持ち悪くない…」
「その境界線が解んねぇな」
「いいんです。私がそう思うだけだから」
そう言い切った理世の言葉に三蔵もフッと笑みをこぼした。
「おんやぁ?三蔵サマが珍しい」
「うるせぇ、てめぇは死ぬか?」
「…勘弁して」
そう言って宿屋に戻っていく一行だった。