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ロドスの日常[方舟]

第21章 朗読セラピー


「アーミヤ、そちらへ」
 私は姿勢を正し、アーミヤを向かいのソファに座るように促した。アーミヤがソファに座ったのを見、私は話し出した。
「ディアマンテに朗読させているのは、何も私のためだけじゃないんだよ、アーミヤ」私は言葉を続ける。「ディアマンテの過去の話を少し聞いてね。それと、アーミヤも知ってはいるだろう? ディアマンテは博識そうに見えるが、学力はそこまで高い訳ではないんだ」
「それは、聞きました。でも……」
「もちろん、ディアマンテの同意はちゃんと得たよ。それに絵本はそこまで難しい単語はないし、文字も大きいからね、ディアマンテもそれならばって快く受けてくれたんだ」
 私は、ディアマンテと宝石についてグルグルと考えた。ディアマンテは鉱石採掘場のことをよく思っていない。それなのにあの杖を手にしてしまったが故に術師として、そして時には貴族とやり取りをする宝石鑑定士とならなければならなかった彼の心情を思うと計り知れない。彼は装うしか出来なかったのだ。賢そうに、上品そうにして振る舞うという装いを。
「ドクターは、いつも私たちのことを考えてくれているのですね」
 アーミヤは安心したかのように優しい笑みを浮かべた。良かった。張り詰めたような顔が君から消えてくれて。
「みんなの理想でありたいとは思っているよ」
 私も笑みを返し、将来のロドスを想った。記憶喪失前と変わらない私がちゃんと出来ているだろうか。私も、少しだけディアマンテの気持ちが分かる気がするんだ。

 おしまい
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