【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
「宿題って、僑香に手伝って貰っているってそれか?」
2人が顔を突き合わせて書いている提出物を指しながら夏潤は言った。
「手伝って貰ってるんじゃなくて、感想を聞いているだけよ!」
顔を真っ赤にして反抗したが、殆どの手直しを僑香がしているのを知っている。
「前はよく皇太子に呼び出されていたじゃ無いか。」
夏潤がそう言うと、筆を持っている月娘の手がピタッと止まった。
そうなのだ。
いつの日にか壬氏は月娘を自分の邸に呼ばなくなった。
中央宮で会う事もあるが、月娘の顔を見たら走って寄ってくる壬氏は、今は距離を置いて月娘を見ている。
月娘はそんな壬氏を不思議に思ったが、彼が何も言わないので月娘も何も聞かなかった。
そうこうしている内に、月娘は皇室に学びに行く様になっていた。
壬氏と月娘が、夫婦になる為の準備をしているなんて、月娘は知りもしなかった。
だが、月娘より4つ歳上の夏潤は、大人の事情を月娘よりは分かっていた。