第9章 忘れられた子どもたち
その後、警察から帰ってきたジーンの遺体は荼毘にふされてご両親と帰国した。
同時にあたし達も東京へと帰途に着いた。
そして……
「よっし、OK。えーと、窓も全部閉めたよね」
「こっちも終わったよー」
「もうでられる?」
「ナルとリンさんの支度が出来たらね」
「こことも暫くお別れだなー」
「まあ、でも良かったじゃないですか。オフィスが残ることになって」
「うん」
「そーだね」
オフィスなのだが、結局残すことになったのだ。
東京に帰ってきてから数日経った頃に、突然ナルがオフィスは残すと言ったのである。
『分室維持の許可がおりたんだ。日本の心霊現象は面白い。なにかいい条件があるんだと思う。だからこのまま分室を残せればと申請をしてあったんだ』
だが、ナルとリンさんは一時期イギリスに帰国。
なので出発当日の今日に送別会をしようとなったのだ。
「本人たちが一番乗り気じゃないのにさあ……よくやることを決めたもんだよねぇ」
「だねぇ。ナルとリンさん、こーいうの嫌うのにね。ぼーさん達強引だから」
あちこち戸締りをチェックしながら、あたしは苦笑する。
「どのくらいお休みしはるんですか?」
「まだわかんない。色々あってナルは当分帰れないって言ってた。その間、森さんが所長代理できてくれるんだって」
「生活の心配をせずにすんでよかったわねぇ、結衣、麻衣」
「あたし達にたかられずに済んでよかったねぇ、綾子」
「アンタ達にたかられて困るほど、お財布は小さくないわよ」
「わーい、いいこと聞いたー♡」
「今度色々奢ってね♡」
なんて騒いでいれば機材室からリンさんが出てきた。
「リンさんは?すぐに戻ってくんのかえ?」
「いえ……しばらく向こうに残ります」
じゃあ、暫くリンさんとも会えないな。
なんて思っていれば麻衣がふらふらとリンさんに近寄っていくので、あたしもそちらへと歩み寄る。
「……リンさん。あのう……前に日本人は嫌いだって話をしたことがあったでしょ?」
「ありましたね」
「あの時、あたしと結衣と同じことを言ったひとがいるって──もしかしてジーン?」
「はい」
あのダム湖でナルと話した時、ナルはあたしと麻衣はジーンと似ていると言っていた。
でもとくに似ているのは麻衣だとも言っていた。