第1章 悪霊がいっぱい!?
「起きたか!嬢ちゃん!」
何度か瞬きをすると、頭上には法生とジョンに綾子の姿があった。
結衣は『あれ?』と思いながら身体を起こすと隣では麻衣が眠っている。
(さっきの……さっきの夢?)
首を傾げていれば、結衣の額に法生が触れた。
少しカサついた大きな手に驚いていれば、彼は安堵したかのように息を吐き出す。
「あー、良かった。いくら呼んでも起きねえもんだから、心配したぞ」
「ほえ……?」
「いや、ほえじゃなくてな……。覚えてるか?おまえと、双子の妹の嬢ちゃん、下駄箱の下敷きになったんだよ」
「あー、あーー……なんとなく、思い出したかも」
辺りを見渡して、自分と麻衣が寝かされていたのはナルの車であることに気が付いた。
そして2人には法生が着ていた上着がかけられている。
「んで、大丈夫か?痛いところは?」
「ちょっと、頭が痛いぐらい……って、麻衣!!」
結衣はペタペタと麻衣の頬に触れたりした。
目立った怪我はないが、意識が戻らないということは、まさか……と嫌は方向に考えが行く。
「麻衣!麻衣!!」
「おい、嬢ちゃん!おい!嬢ちゃんっ」
何度か法生と結衣が呼ぶと、麻衣の目が開いた。
「麻衣!」
「だいじょうぶか?つーか、結衣は頭が痛いならそんな叫ぶんじゃねえよ。痛いのに響くだろうが」
「あれ?えーと、結衣?」
「なによもおっ!あんたら、何回呼んでも起きないから死んじゃったかと思ったわよ!」
「「ごめん……」」
綾子を見れば涙目になっていて、本当に心配していたのだなと結衣は少しだけ驚いてしまった。
だがとりあえず、麻衣も意識が戻ったようで安心する。
「2人とも随分眠ってたな。もう朝の4時だぞ」
「そんなに……?あ、ぼーさんこれありがとうね」
結衣は法生の上着を軽く畳むと彼に渡した。
そして麻衣はというと、辺りを見渡してからナルの姿を探していた。
「ナルは?戻った?」
「いんや」
2人は『そうだよな』と妙に納得した気分になった。
ナルがあんなふうに優しく笑うはずなんてないのだから。
「あれ?黒田さんは?」
「そーいえば、黒田さんいない」