第8章 呪いの家
「よろしくお願いします」
そんなリンさんの元に麻衣が近寄ると、彼の袖を引っ張って声をかけた。
「……リンさん。ナルはどこか悪いの?」
「……いえ。とくに持病があるわけではありません」
「じゃあ……ナルは気功を使ったよね。それが原因?」
麻衣の言葉にリンさんは目を見張った。
「前にも倒れたことがあったよね。貧血だって言ってたけどあれも本当はそうだったんじゃないの?こうなることが分かってたからリンさんはナルを止めたの?」
「……そうです」
「気功ってそんなに危険な方法なの?病気も治せるんでしょ?なのにナルはどうしてこんな事になっちゃうわけ!?」
麻衣は泣き出してしまった。
慌ててあたしが駆け寄り、その背中撫でていればリンさんは優しく麻衣の肩を掴む。
「谷山さん、落ち着いてください。……人は誰でも気を放出しています。気配というのがそれです。普通はただ放出されるだけで何かに使用することはできません。気功というのはそれを上手く増幅して、ある目的のために制御する方法です。スポーツと同じで修練を積めば誰でもある程度の事はできるようになります。ですがナルはそういうのとはケタが違うんです」
「ケタが違う……?」
「あれは天賦の才能です。ナルは小さい頃ポルターガイストをおこす子供でした」
その言葉にあたしと麻衣は目を見張った。
「本人の意識では不可能な気の放出の制御をできるようにする為にわたしが気功法を教えました。ですから気功法にスタイルはよく似ています。けれども気功とは全然別のレベルのものなんです」
「そう……なの?」
「はい。ただナルの持つあの力は人間には大きすぎる。ですからそれを使うと身体のほうがついてこられなくなる……そういうことです」
だからナルは心臓が止まった。
身体がショック状態になってしまったのである。
「………あたしのせいだ」
麻衣の瞳から涙が零れる。
あたしはその言葉に驚いて、慌てて麻衣に声をかけた。
「麻衣のせいじゃ……」
「あたしが挑発するようなこと言ったから……」
「挑発に乗る方が悪いんです」
「でも……」
「ナルにだって何がおこるかわかっていたことなんですから」
リンさんは冷静に麻衣を落ち着かせるように言葉を紡ぐ。