第8章 呪いの家
あたしたちは顔を見合せてから、慌ててナルのあとに続いた。
何度も何度もへたり込みそうになるぼーさんと安原さんを励まし、あたしたちは海岸を歩く。
途中で影がある所を見つけて声をかけた。
「影がある!あそこで休もう!」
「あたしお水もらってくる──」
その時綾子が叫んだ。
「……ナル!?」
慌てて後ろを振り向くとナルが倒れていた。
「ナル!?」
「ナ……ナル!」
真っ先に飛んで行ったのはリンさん。
彼は慌ててナルを抱き起こそうとしたが、はっとなってナルの胸元に耳をあてた。
そしてリンさんはとつぜんナルに心臓マッサージをしだしたのである。
「……やた、ちょっと大丈夫なの!?」
何度も何度もリンさんは心臓マッサージをする。
そして片手を振りかざして、ナルに平手打ちしたのだ。
「ちょっ……リンさん!?」
「ナル!息をしなさい!」
リンさんの言葉に固まっていれば、ジョンが駆け出した。
「救急車呼んできます!」
その後、ナルは近くの救急病院に運ばれ集中治療室へと入っていった。
あたしたちは廊下にいたのだが、背筋が凍る感覚を味わいながらただ無言で突っ立っている。
ぼーさんと安原さんとジョンはすぐに手当のために連れていかれた。
あたしたちは集中治療室の近くの廊下の椅子に座り、ただ扉が開くのを待っていた。
(心臓マッサージしてた……リンさん。息をしなさいって言ってた。あれって、ナルは心臓が止まってたってことだよね?)
冷や汗が浮かぶ。
「……処置室のほうのぼーさんたちの様子見てくるわ。そろそろ手当も終わるころだろうし」
「あ、あたしも……」
「結衣はここで座ってなさい。顔色が悪いわ」
綾子は立ち上がろうとしたあたしを座らせて行ってしまい、あたしは彼女をただ見送った。
暫くしたころだろうか。
集中治療室の扉が開いて、お医者様が出てきた。
「どなたか、代表者のかたは」
「わたしです」
「ショック症状だと思われます。脈拍も弱いし不整脈が見られます。一応、ショック状態からは回復しつつあると見てよいでしょう。ただ余病を併発するおそれがありますので暫くは入院していただいて、経過を見守ることになります」
真砂子は顔を覆ってしまい、リンさんはお医者さまに頭を下げていた。