第1章 悪霊がいっぱい!?
「外へ出ろ!この建物はもろいんだ!」
ナルは手で窓ガラスを叩き割る。
すると外には音に気がついたのは法生や綾子にジョンの姿があった。
彼らの手を借りて、結衣達はなんとか外に出た。
外に出た時には彼女たちがいた窓ガラスのほとんどが割れていて、無惨な姿になっていた。
「なんだよ、ありゃぁ……」
「黒田さん、大丈夫?怪我してる……」
少し俯いた様子の黒田は、結衣の言葉に小さく頷く。
「血が出てるわ、手出して。あんた達は怪我してないの?」
「あたしも結衣も平気」
だが、黒田は割れた窓ガラスの付近にいたせいで怪我を多少していた。
綾子はハンカチを取り出すと、黒田の怪我をした手に巻いていく。
「今のはなんだ?あれも地盤沈下のせいだってのか!?りっぱなポルターガイストじゃねえか!!」
「建物がゆがんだ音どころか、ぜったいに誰かが壁をたたく音だったわよ」
「それにしちゃハデすぎたがな。巨人でもいたんじゃねえのか?校舎を沈めてるのもそいつかもねぇ」
法生の言葉はあからさまにナルを馬鹿にしている言葉だった。
その言葉に流石に結衣も麻衣もムッとした表情になる。
「バッカバカし!もう少しで子供の冗談にひっかかるトコだったわ」
「せめておれたちだけでもしっかりしようぜ」
そういうなり、法生と綾子は旧校舎へと向かった。
ついさっきまでナルの言葉に納得したり、普段は口喧嘩をしているというのに、こういう時だけは仲良くしている。
その事に結衣も麻衣も苛立っていた。
「なあにィあれ!こんなときばっか仲良くしちゃって……」
「普段は口喧嘩してるのに……!」
去っていく二人に結衣は眉を寄せて怒りを顕にする。
そんな中で麻衣はナルの手から血が出ているのに気が付いた。
「ナル!手……」
「ああ……たいしたことはない。すぐに乾く」
「でも手当しないと」
「黒田さんを見てやれ」
「ナ……」
「今は、ほうっておいてくれたほうがありがたい。自己嫌悪で吐き気がしそうだ」
ナルの言葉とその後ろ姿からは拒絶が見えた。
それ以上、麻衣は何も言えず結衣もただ見守ることしか出来なかった。
そしてナルは歩き出したかと思えば、何も言わずに姿を消した。