第1章 悪霊がいっぱい!?
「……そんな!じゃあわたしが襲われたのは!?」
「……たぶん君についてきた浮遊霊のしわざだろうな」
ナルの言葉に黒田はなんとも言えない表情になる。
「そんで?ナルはどうすんの、帰るの?」
「ああ、仕事はおわったからな」
「あー……そっか、そーだわな」
「お仕事が終われば、帰るよね」
結衣も麻衣も妙にすっきりしない気がした。
仕事が終われば帰る、それは当たり前のことなのだが、何故か妙にすっきりしないのだ。
そんな中、黒田は眉を寄せながら小さく呟いた。
「……霊は居ると思うけどな」
「いない。調査の結果も完全にシロだと出ている」
「あなたには分からないだけかもしれないでしょ!?」
「では君が除霊すればいい。僕は自分の仕事は終わったと判断した。だから帰るだけだ」
ナルのきっぱりとした言葉に黒田は背を向けた。
そんな彼女に同情はしないが、結衣は少し困ったように眉を寄せる。
「……残念だな。なんか夢が消えちゃったキブン」
「そうだね、なんか夢が消えちゃった感じだね」
双子の言葉にナルは首を少し捻る。
「……なんだって?」
「学校の片隅にいかにもなにかありそうな古い校舎があって、幽霊がでるなんてウワサがあって……って、一種のロマンじゃない?ホントに人が死んじゃったりしたらイヤだけど無害な怪談ならあったほうがいいもん」
「その方が、なんか楽しいでしょう?受け継がれる話とか、ワクワクするとかドキドキするとかさ……」
「……そんなものかな」
ナルが考えるように呟いた時である。
小さくなにか音が鳴ったかと思えば、次には大きな亀裂の音が聞こえて窓にヒビが入った。
「麻衣、結衣!外へ……!」
ナルが慌てた表情でそう伝えた時、勢いよく窓ガラスが割れた。
窓の近くには黒田がいて、彼女にガラスが降り注いでいく。
「黒田さん!!」
慌てて結衣と麻衣が駆け寄れば、彼女は幾つか怪我をして少量だが血を流していた。
そして駆け寄ると同時に何かが叩くような音が響いてくる。
「…誰か叩いてる?」
「……なに、これ……誰かがたたいてる……」
「……倒壊する……?」
すると、勢いよくあちこちの扉が独りでに締まり始めた。
その様子を無言で眺めていたが、ナルは我に返ったように麻衣の腕を掴む。