第8章 呪いの家
「ええ……わかりましたわ。この家にいた霊がとても空虚だったわけが。子供たちやナルに憑いていたものも、家をさ迷っていたのも、どの霊もあんなに空虚な感じがしたのはあれが何者かの使役霊だからですわ」
「……使役」
「あの霊は自分の意思で動いていません。誰かが彼らの恨みを……成仏できないほど深い苦しみを利用して彼らを式として使役しているのですわ」
一体誰が。
結衣は眉を寄せながら法生の怪我の手当を安原と手伝いながらおこなった。
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ー結衣sideー
外が明るくなっていた。
彰文さんたちは眠りについているが、あたしたちはほとんど眠れていない。
お経の声に引っ掻いたり叩く音。
それが耳についてなかなか眠れなかった。
だがやっと外が明るくなってその音もやみ、ほっとしてしまう。
「──さあて。ちょっくらもう一働きするか」
「ぼーさん!?もう動くの!?」
あたしはぼーさんの言葉に目を見開かせる。
「結局結界張りっぱなしで少ししか寝てないじゃん。もう少し寝てたら?」
「そうも言ってられんだろ。はやくカタをつけちまわないと何が起こるか分からん。今夜また昨夜みたいな襲撃を受けたら持ちそうにないしな」
昨夜の襲撃は酷かった。
鎌鼬にあの白い光の痛みは今も残っている。
「ってなわけで、リン。おまえさんは残ってくれ。気力をそぐんで結界は解いていく。いくぞ、ジョン」
「行くって、どこに?」
「『三六塚』にきまってるだろーが。読経の声が聞こえたろ?犯人は三人の六部だろう」
「そして三人がこの辺りに吹き寄せられた霊を使役霊としてつこうていたわけですね」
「恐らく一揆で首を切られた五人も、伝説の姫と恋人やらもな。このあたりで死んだものの霊は全部式として使役されていると考えていい」
ぼーさんの言葉にジョンは『えらい数です』と呟き、ぼーさんと揃ってうんざりとした表情である。
たしかに数が多い。
こういう時、何も出来ないことが凄く歯がゆい。
あたしが出来るのことは九字を切るか、少しの真言を唱えることぐらいだ。
なんて思っていた時である。
「あんたは寝てれば」
綾子の言葉に、あたしたちは彼女へと視線を向ける。
「そんでジョン一人に任せろって?馬鹿言うな」
「アタシがやる」