第8章 呪いの家
彰文の案内で向かうと、そこには古びた小さな神社が佇んでいた。
手入れはされているが所々染みや亀裂が入っているのが目立っている。
双子は『ぼっろちい』と思ったが、綾子はそうではないようだ。
神社を見るなりご機嫌で微笑んでいたのである。
「あらあ!立派な神社。ちゃんと掃除もされてるじゃない」
「立派ですか?掃除はうちの家の者が代々世話役をしてるんです」
「へえ、彰文さんもじゃあ掃除してるんですか?」
「してますよ。小さい頃からさせられてるんで」
「若旦那、若旦那。ありゃなんだ?」
法生がとある方向を指さす。
そこには三つの岩が並んでいて、岬にあった墓石と似ている所がある。
「それはトハチ塚です」
「とはち塚?」
「十八と書いて十八塚(とはちづか)。なんだかは分からないんですけど、別名を三六塚ともいうんで、十八というのは一種の地口だと思うんですけど」
「地口?」
「『さぶろくじゅうはち』でしょ?」
「あ〜、掛け算……」
「なんで三六塚と言うのかは誰も知らないんです。でもこれが三つでしょう?で、岬の途端にあるのが」
「五つだったよね」
「ええ。ですから岬のあれは本当は六つあって、一つは紛失してしまったんじゃないかと、祖母なんかはそう言うんですけど」
「紛失した塚ねえ」
岬にあった五つの墓石と、三つの塚。
紛失してしまったというのなら、その紛失した塚はどこに行ってしまったのだろうか。
結衣は首を傾げながら三つの塚を見る。
「塚、ゆうのはこの場合お墓のことですよね。それが一つあらへんゆうのは吉見家の事件に関係ないですのやろか」
ジョンの言葉に綾子が『それだ!』と表情を明るくさせた。
「それよ!塚が狐の墓なんだわ。でもって店を建てた時勝手に移動させちゃったわけ。その時に六つの中の一つ壊すかどうかして、ちゃんと移動させなかった。その祟りで──」
「……という想像も成り立つと」
法生の言葉が綾子の言葉を遮る。
まるでナルみたいだなと結衣は小さく笑った。
「なによお!」
「先走るな、とナル坊なら言うだろうよ。真砂子、どう思う?」
「……狐と言われて本当に狐だった事はないのですけど」
「そうなの?」
結衣が首を傾げていれば、真砂子は『ええ』と小さく返事をしてから頷いた。