第8章 呪いの家
麻衣が言葉を途切れさせ、あたしは息を飲む。
祠は先程まではっきりと見えていたのに、ぐにゃりと歪んで見えていたのだ。
「歪んでる……」
「うん……歪んで見える。なんか、へん……」
「うん……ぼくにもよく分からない。悪い場所ではないけれど、よい場所でもないみたい……そうだな。霊場の気配がする」
「霊場……」
霊場とはあまり聞き覚えのない名前。
なんだろうと思っていれば、麻衣が恐る恐るとナルに聞いた。
「……ナル、大丈夫?」
「ん?うん。ごめん……心配をかけて」
そうだ、ナルは憑依されているのだ。
身体は平気なのだろうかと思いながら、心配げに見ればナルはあたしと麻衣を優しく見ていた。
「ううん。大丈夫だったらいいの」
「ナルが平気ならよかった」
ナルはまた柔らかく微笑んだ。
実物では見たこともない柔らかく優しい微笑みだった。
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ーthird person singularー
「で、どんな夢見たの?」
朝日が上り、暑い日差しが照りつけた部屋。
結衣は詰め寄るように顔を真っ赤にさせている麻衣に尋ねた。
朝起きて早々に結衣は夢の中でナルがいっていた、麻衣が見た怖い夢の内容を聞こうとした。
なのに何故か麻衣は話すを渋るのだ。
「うう……言い難いんだよぉ!」
「言い難い?あっ!まさか、麻衣、お姉ちゃんに言えないような内容の夢を見たっていうの!?お姉ちゃんは、そんなふしだらな子に育てた覚えはないよ!」
「ふしだらな夢じゃない!た、たぶん……」
「たぶん?」
ギロリと結衣に睨まれた麻衣は縮み上がる。
話したくない内容ではあるが、ここで話さなければ姉は納得しないだろう。
そう思った麻衣は観念して夢の内容を話した。
「ふうん……」
夢の内容を聞いた結衣は腕を組んで眉を寄せる。
「夢の中で、ナルが彰文さんを殺害。本当は麻衣とナルが落ち合うのに手紙を彰文さんにすり替えられていて、麻衣は別の場所にいた。だが手紙をすり替えられているのに気がついて麻衣が行くとナルが彰文さんを殺害していた」
「う、うん……」