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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


「そう。……怖かった?」

「ううん!そんなことなかったよ!」

「よかった」


ナルはまた柔らかく優しく微笑む。
そんな彼に麻衣は顔を真っ赤にさせているが、あたしは話がついていけてなかった。

あたしは見てないが麻衣は見ている夢。
それはどんな内容なのかと思いながらも、起きた時に教えてもらおうと息を吐き出す。


(あたしっておじゃま虫のような気がする……)


二人の甘い雰囲気を見ながら、あたしは更に息を吐き出す。


「あっ、ひょっとしてあの夢ナルが見せたの?」

「少し違う。ぼくは夢に入る方向を示しただけ」

「方向を……示す?」


方向を示す。
それはどういう意味なのだろうと思っていると、頬の横をあの白いフワフワとした物が過ぎる。
それを追いかけるように視線を断崖へと向けて、首を捻る。

断崖の所には階段があって、上から繋がっている。
あんな所に道があるなんて思っていなかった。


(降りられる……ってことだよね?あそこを通れば)


続いていく階段を目で追いかけていけば、穴があった。


「行ってみよう」

「あ、うん」

「うん……」


ナルはあたしと麻衣の手を取る。


「これ、みんな霊?」

「そう。吹き寄せられた霊のようだね」

「こんなにも……」


ナルに連れられて、あたしたちは穴の前に辿り着く。
そしてゆっくりと中に入っていくと、そこは洞窟となっていた。

もしかしたら、彰文さんが言っていた洞窟かもしれない。
そう思いながら中を見て回っていれば、麻衣が声を上げた。


「あ!見てホラ。あの霊たち海のほうから来てたんだね」


洞窟の先には海がある。
そこから霊たちはフワフワと浮きながら、断崖の方へと向かっていた。


「ね、これ……どういう霊なの?」

「たぶん──このあたりの海で死んだ命。ここは魂が吹き寄せてくる場所らしいから」

「「ふうん」」


白いフワフワした霊。
それが気になってあたしと麻衣は揃って、それを指で突く。
すると水が弾けるような音と共に魚が見えた。


「……魚?」

「魚の霊……?」


初めて魚の霊なんて見たかもしれない。
なんて思っていると、視線の先に小さな祠があった。
こんな洞窟の中に祠があるなんて……。


「祠だ」

「本当だ。ねえねえ、あそこあんな所に祠があるよ。魂が通る場所だから──」
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