第8章 呪いの家
「じゃ、アタシが部屋まで送っていくわ。痛むのは背中だけ?他には?」
綾子はナルを支えながら出ていく。
その様子を見送っていると、麻衣が隣で青ざめたようにしているので溜息を吐き出した。
「せっかくのチャンスだったのにね」
ぼそりと呟いている時、ぼーさんも呟いた。
「……どうかのかねぇ」
「え、なにが?」
「いや、綾子がさ。あいつは何者なんだろうなって」
「なにモノって……」
ぼーさんの言葉に双子揃って首を傾げた。
何者かと言われても『巫女』だろう。
「さっきの除霊だって完全に失敗だろ。あいつが役に立ったのを見たことあるか?」
「……ない」
「だろ?だいたい巫女ってことじたいが胡散臭いんだよ。ちゃんとした神社に所属する巫女さんがふらふら勝手に除霊をして回ったりするもんか」
「え、そうなの!?」
「巫女って勝手に除霊しないの!?」
「しない。あくまでも『自称・巫女』ってことだろう。だからって巫女の衣装をきてるだけの霊能者っていうのとも違うしな」
「そうなんだ……」
「いちおう両部神道の方式にのっとってるからな。どっかでちゃんと修行はしたのは間違いねぇだろうし。第一ほんとに無能ならナル坊が連れてくるか?」
「それも、そうかあ……」
そう言われると綾子は何者なんだろうと思えてくる。
すると、麻衣がふとカメラの映像を見て青ざめて固まった。
「麻衣?」
「おっ、なんか映ってる?げ」
「あらあ……」
モニターにはナルが綾子にキスしているようなシーンが映っていた。
「……あららららら〜。こりゃ、またなんとも……やるなぁ、ナルちゃん──」
「まさかの年上好きとは……」
突然ぼーさんの顔色が変わる。
そして勢いよく立ち上がった。
「ぼーさん?」
「どうしたの?」
その問いに答えることなく、ぼーさんは玄関へと向かって走り出した。
「リン!こい!」
「え、え?」
「なに、どうしたの……って!?」
映像をよく見ると、ナルが綾子の首を絞めていたのだ。
それを見たあたしたちも慌てて部屋を飛び出して、廊下を走ると咳き込んでいる綾子と倒れ込んでいるナルがいた。
「……ナルは……」
「リンが手刀で一発」
「綾子、大丈夫!?」
咳き込んでいる綾子の背中を撫でながら、あたしは気絶しているナルを見た。