第8章 呪いの家
「誰が三十よ!まだ二十三よ!」
「そう言ってるうちにあっという間に来ちゃうんだよね〜」
「三十まであともう少しだよ〜」
「かっわいくないわね、あんた達は!」
「綾子に可愛いと思われてもね〜」
なんて三人で言い争いを繰り広げていれば、笑い声が聞こえてきた。
なんだと思って笑い声がする方向へと視線を向ければ、彰文さんがおかしげに笑っていて慌てて口を手で塞いでいる。
隣にいるぼーさんは呆れ顔で、あたしと麻衣は赤面してしまう。
「す、すみません」
「こ、こちらこそ……」
恥ずかしいところを見られてしまった。
なんて思っていると、綾子が彰文さんに勢い込めて聞いた。
「そうだ!吉見さんておいくつ?」
「ぼくですか?もうすぐ二十歳ですけど」
ということはまだ未成年である。
あたしは綾子の肩に手をかけて笑った。
「諦めな、綾子」
綾子は顔を俯かせ、あたしと麻衣はケラケラと笑った。
そんな時にボスから怒号が飛んできた。
「麻衣、結衣!いつまで遊んでる!」
「「はいいっ!」」
怒られながらもあたし達はベースの準備に取り掛かる。
機材などを運び終えれば、あっという間に日没前になっていて彰文さんがあたし達を呼びに来た。
是非、皆さんで食事でもという話である。
そしてあたし達はお呼ばれして広い座敷に来たのだが、そこで吉見家の方々に自己紹介された。
「このたびはお呼びたてして申し訳ありません。どうかよろしくお願いいたします」
頭を下げられて緊張してしまう。
そして食事という名の宴会に近いものが始まった。
(えーと、まず体格がいい人が長男の和泰さん。そして細身の靖高さんに、同じく細身の人がお婿さんの栄次郎さん。それから優しげな人が和泰さんの奥さんの陽子さん。長女の光可さん。栄次郎さんは光可さんのお婿さん。えっと、次女の奈央さん。彰文さんのすぐ上のお姉さん……と)
自己紹介された内容を思い出しながら、あたしは記憶する。
勉強とかの記憶はすぐに抜け落ちちゃうけど、こういう事に対しては強いものだ。
「渋谷さん。お酒は」
「いえ。ぼくもリンも飲みませんので」
ナルは未成年である。
まずお酒を飲んだら大問題だ。
「滝川さんと松崎さんは大丈夫ですか?」
「ありがたく」