第7章 血ぬられた迷宮
「麻衣?どうしたの」
「……さっきの、ナルの表情。一瞬だけ、なんか凄く申し訳ないというか悪いことを言ったような気分になって」
「……気にしなくていいと思うよ。ナルも気にしてなさそうだし。とりあえず、なにかあたし達も手伝おう?ね?」
「……うん」
そしてあたし達はナルに指示された通りに動いた。
椅子と丸テーブルを用意して、カメラも設置したのだがナルとリンさんは用意するために出ている。
「うーし、カメラのセット終わったぞ」
「あとはナルとリンさんが用意を整えてくるの待つだけだね」
「……ねえ、ぼーさん。リンさんってどうやって霊を呼ぶのかな?霊を呼ぶだけって言ってたけどさ」
あたしは少し気になってぼーさんに尋ねる。
リンさんは『霊を呼ぶだけ』と言っていたが、どんな方法で呼ぶのだろう。
「ん?そうだなあ。霊を呼ぶ方法ってのには二通りあってな、霊を憑依させる『口よせ』と霊そのものを呼ぶ「魂よばい」ってやつ。ちなみに真砂子がやるのは『口よせ』のほうね」
「ふうん」
「へぇ……」
「リンは霊を憑依させるんじゃねえっつってたろ。てことはやっぱ『魂よばい』のほうじゃねぇのか」
「リンさんそんなことできるの!?」
「ふつーはまあ、できねぇわな。『魂よばい』は『招魂』といって、元々中国の巫蟲道にあった方法だ。リンは中国人だって言ってたからなあ」
そういえば……と思い出す。
リンさんは中国の人であって、その事でちょっと一悶着と言っていいのか分からないことがあった。
「おれたちはずっとリンを陰陽師だと思っていたが、こうなると事情が違うわな。リンはおそらく中国術士の道士なんだと思うぜ」
「中国術士の道士……」
「『口よせ』を『摂魂』て言うんだが、普通『摂魂』よりも『招魂』のほうが難しいとされる。道士の格が全然違うんだ」
「え。つまり真砂子よりリンさんのが優秀ってこと!?」
「あ、麻衣……余計なことを……」
「悪うございましたわね」
やっぱりとあたしは頭を抱える。
麻衣の言葉に真砂子は拗ねたようにそっぽを向いてしまった。
「ごっ、ごめん悪気があったわけじゃないって。でも、そしたら霊の声を聞くのってリンさんがいれば充分だったんじゃあ……」
「降霊会なんてしなくてもよかったんじゃない?」